【スレ43】水族館の飼育係
530 名前:おさかなくわえた名無しさん 2009/06/04(木) 20:06:32 ID:7JCvnZAK
ご無沙汰してます。
水族館の中の人です。
いつも採集の話ばかりだったので、
今回は水質維持に関するお話でも。
水族館で言う濾過は二通りあります。
ひとつは簡単にイメージできると思いますが、
物理濾過といって、水中のゴミを濾し取ることです。
もうひとつは、イメージしにくいのですが、
生物濾過といい、魚等が排泄した有害物質(アンモニア)を
微生物によって弱毒化するものです。
濾過槽の役割は、主に生物濾過にあります。
濾過槽には、濾材として砂や
セラミックのマカロニのようなものが入っており、
この表面に二種類の細菌が繁殖しています。
亜硝酸細菌と呼ばれる細菌が、
魚等が排泄したアンモニア態窒素を亜硝酸態窒素に、
硝酸細菌が亜硝酸態窒素を硝酸態窒素に変化させます。
自然界であれば、
硝酸態窒素を植物が取り込んで有害物質がなくなるですが、
水槽内では植物の育成は難しく、硝酸態窒素の除去は
水自体を交換することで対処しています。
濾過槽にゴミや糞などが流れ込んでくると、
砂の間が目詰まりを起こします。
目詰まりが起きると、砂の中を均一に水が通らなくなり、
濾過の効率が低下します。
これを解消するには砂を洗うしかないのですが、
t単位の砂を洗うなど何日掛かるか分りません。
そこで、濾過等の底面にシャワーパイプを這わせておき、
砂の下から空気と水を送り込んで汚れを洗い流すための
逆洗(バックウォッシュ)と言いう作業を行います。
物理濾過は、プレフィルターを設置し、
濾過槽にはゴミが流れ込まないようにしています。
およそですが、月に一度この作業が入ってきます。
ゴミや汚れとともに濾過細菌も流失してしまうため、
あまり頻繁にやってしまうと生物濾過の効率が
却って悪くなってしまうため、丁度良い見切りをする必要があります。
砂の硬さや汚れ具合を見るのですが、ちょっとした経験が必要です。
531 名前:おさかなくわえた名無しさん 2009/06/04(木) 20:07:29 ID:7JCvnZAK
今回は、手前の蓋の開いている濾過槽の逆洗を行いました。
http://upload.jpn.ph/upload/img/u41373.jpg
濾過砂の上に汚れが溜まっているのが見えます。
http://upload.jpn.ph/upload/img/u41368.jpg
中の砂を撹拌して汚れを浮き上がらせるので、
他の濾過槽との水位調整のための連通管を閉めて
縁を切ってから作業に入ります。
水槽横の空気を送るバルブやポンプにつながるバルブ、
逆洗水を送るバルブの操作をしますが、
手順を間違うと展示水槽に濁った水が噴出すことになるので、
いちいち指差し確認を行いながらやります。
http://upload.jpn.ph/upload/img/u41374.jpg
空気を噴き上げ、砂の間の汚れを浮き上がらせます。
http://upload.jpn.ph/upload/img/u41369.jpg
沸騰した鍋に灰汁が出てくるような雰囲気です。
5~10分泡で洗浄後、逆洗水を送り汚れを除去します。
http://upload.jpn.ph/upload/img/u41371.jpg
上方のオーバーフローから排水しますが、
泡が流れにくいので網や水切りなどで押し込みます。
10~20分ほど流し続け、水が透明になったところで終了。
http://upload.jpn.ph/upload/img/u41372.jpg
バルブや連通管を元に戻し、水槽の状態を確認しに行きます。
それぞれの濾過槽は1~2ヶ月に一度逆洗を行いますが、
水族館の水槽数は200以上ありますので、
毎日どこかしらの濾過槽の逆洗が行われています。
海獣類は呼吸を水に依存していませんので、
生物濾過より物理濾過が重視されるため、
濾過槽の構造も異なっており、
ほぼ毎日のように逆洗を行なっています。
532 名前:おさかなくわえた名無しさん 2009/06/04(木) 20:34:03 ID:rIsuAZR3
おおおおまさに知らない生活!
面白いな~。
今度水族館行ったら違う視点で見られそうだ。
534 名前:おさかなくわえた名無しさん 2009/06/04(木) 23:20:27 ID:GvYCqpXt
うほっ…貴重な写真資料まで…
社会見学の気分だ
ありがとう
538 名前:おさかなくわえた名無しさん 2009/06/05(金) 05:35:25 ID:GQSK/0aK
勤務中撮影とか、施設を公開とかは、許されているのかな…。
540 名前:おさかなくわえた名無しさん 2009/06/05(金) 10:51:52 ID:c+df+CM9
>>538
野暮というものです。